タイトル未定

ヤマなしオチなし意味もなし

6月に読んだ本26冊

6月に読んだ本をまとめてみる

 

これは経費で落ちません! 9 ~経理部の森若さん~

これは経費で落ちません!シリーズ第9巻。
広報部での後進育成、社内の派閥、そして税務調査が入ることに。トナカイ化粧品との合併から半年後が描かれる。
主任に昇進した沙名子もだいぶ落ち着いてきたようで、役職者として仕事に励んでいる姿がたくましく見える。真夕ちゃんも頼もしくなったなあと思って読んでいたら、エピローグでの志保とのやり取りでにっこり。
真夕ちゃんに言われたからこそというのもありそう。そして太陽がプロポーズっぽいことを言っていたが、あれを沙名子は聞いていたのかいなかったのか?次巻以降が気になる。

 

彼女がそれも愛と呼ぶなら

亜夫くん、到さん、氷雨くん。ママには3人の恋人がいる。皆と仲良しだけど友達にはこの関係性は言いづらい…。
恋愛ってなんだろう。一夫多妻生活を送る方はTVで見かけるが、一妻多夫は見たことないなあと思いながら読んでいた。本作は夫ではなく恋人だけど。
こういうのは本人たちが良ければお好きにどうぞの考えではあるが、自分に置き換えると無理かなあとしか思えない。
好青年だと思っていた千夏の彼氏が束縛DV男になってびっくり。とりあえず離れられて良かった。
もう1人のメインである絹香も向き合って良い関係になると思いきや、まさかの展開に。ままならないことって多い。

 

レモンと殺人鬼

妹を殺された美桜。被害者である妹に保険金詐欺の疑惑が浮かび、美桜は妹の無実を証明するため調査に乗り出す。
図書館で100人越えの予約を待ってようやく借りられたので、期待値のハードルが上がっていたのか、個人的には微妙だった作品。
ただ妹の無実を証明するために走り回る姉の話かと思っていたら、意外な方向に話が進み、どんでん返しかと思っていたら手のひらでころころ転がされている感じ。
最終的にはそっち行っちゃうかあ、と思ってしまった。
こじつけ感がするところもあり、なんとなくもやもや。タイトルにレモンとあるが、それより鶏肉が印象的。

 

誰でもない彼の秘密

15歳のエミリーが出会った、名乗るほどのものではないと言った彼。謎めいた彼に惹かれるエミリーだが、ある日彼の死体が家の敷地から発見される。
かわいい表紙からは思いつかないミステリー。
主人公のエミリー・ディキンソンは実在したアメリカの詩人だそう。実際の彼女とはだいぶ性格も違うそうだが、これはこれで楽しめた。
伝記っぽい感じのフィクションでヤングアダルトに分類されるので、ごりごりのミステリーを期待すると物足りなさを感じそう。
ブロンテ姉妹を主人公にしたものもあるそうなので読んでみたい。

 

壊れる心 警視庁犯罪被害者支援課

警察の人間だけど捜査はしない。被害者に寄り添って見守るのが私の仕事だ。
通学中の児童たち車が突っ込み、犯人がなんと徒歩で逃走という事件が発生。
主に描かれる被害者が妊娠中の妻を亡くした夫ということで、池袋の事件を思い浮かべながら読んでいた。
犯罪被害者に寄り添い、話を聞くという犯罪支援課。実際にもあるんだろうか。
どこに向けたらいいのか分からない怒りとやるせなさで苦しくなっている被害者の姿は読んでいてしんどかった。救いがないのもリアル。

 

パライソのどん底

とある村にやってきた転校生の高遠瑠樺に惹かれていく律。だが彼に誰も近づこうとしない。ある日、律と瑠樺が体を交えた日から不可解な出来事が起こり始める。
BL×ホラー。思ったよりBL描写が多いので苦手な方は要注意。
澤村伊智さんの「ぼぎわんが、来る」のような雰囲気にBL要素を追加した感じ。
不老不死の人魚伝説や国生みなどの日本のいろいろな伝承も混ざっているため、ちょっとでも知っているものがあるとより楽しめるかも。
良い感じの雰囲気で始まったエピローグがあんな感じで終わるとは。メリーバッドエンドな終幕。

 

伯爵と妖精 あいつは優雅な大悪党

妖精が見えて話もできる。フェアリードクターとして働くリディア。父親に会うためにロンドン行きの船に乗りこんだが、エドガーと名乗る青年に誘拐されてしまう。
だいぶ昔にアニメを見たことがあったが話をすっかり忘れていたのと、いつのまにか原作が完結していたということで手を付けた。
少女小説だが、冒険要素もありはらはらしつつ楽しめる。遊び人のヒーロー(実はヘタレ)と、意地っ張りヒロインでおくる王道のラブロマンス。
久々にこういうのを読んだ。

 

草原のサーカス

製薬会社や大学の教授として働く依千佳と、アクセサリー作家の仁胡瑠。
ある日、姉は試験データの偽造、妹はブランドのプロデューサーへのストーカーで罪に問われてしまう。
2人とも罪に問われるようなことをしてしまったとは思うが、どこか共感できるところがあるし、もしかしたら自分も似たようなことをしてしまうかもと思ってしまった。
栄光をつかんだ後に転落していく姿が痛々しい。姉の姿は小保方さんを思い出した。
弁護士が言う言葉の一つ一つが重たくて、なるほどなと思わされる。
今後の2人の人生が平穏だといい。

 

グレイスレス

AV業界でメイクとして働く聖月。彼女の仕事ぶりが淡々と描かれるだけの物語。
初めて知った方だったが、ご自身もAV女優として仕事をされていたそう。業界の裏側についての描写が詳しいなあと思っていたのでびっくり。
作風なのか分からないが、たびたび「男の射精を促すための~」といった、作者は本当はAV業界が嫌いなんだろうかと思うような表現が出てくるのでなんとなくもやもやしてしまった。なんというか、作者自身が業界を斜めに見ているように見えてしまう。
短い作作品だが読みにくく、不思議に思っていたら芥川賞候補だった。なるほど。

 

鍵屋の隣の和菓子屋さん つつじ和菓子本舗のつれづれ

つつじ和菓子本舗で働く祐雨子さんに片思い中の多喜次。思いを寄せているのが兄だと知り、自分を見てほしいとプロポーズ。多喜治はつつじ和菓子本舗に住み込み、和菓子職人としての修行の日々が始まる。
鍵屋がメインのお話もあるようなのだが、そちらは未読。特に問題無し。こちらが終わったら読もうと思う。
和菓子をテーマにした日常の謎系の作品。
プロポーズされているのに、ちゃんと多喜治のことを考えているのか怪しい祐雨子にちょっともやもやしてしまった。1巻だからだろうか。
和菓子屋さんって見なくなったなあと思いながら読んでいた。

 

風よ僕らの前髪を

弁護士の伯父を殺害したのは養子の志史なのか。元探偵事務所員の悠紀は伯母からの依頼を受け、彼の調査を始める。
エモさを感じる表紙とおしゃれなタイトルに惹かれて読んだ。
犯人を探すよりも、なぜそんな犯行に至ったのかをメインに描いているので読み進めるとだいたい犯人の検討はついてきてしまうのが賛否ありそう。
登場人物多めかつ様々な人たちの過去が描かれるため、時系列を整理するようなところが出てくるのがありがたかった。
鮎川哲也賞優秀賞受賞作とのこと。著者の他の作品も読んでみたい。

 

彼女は頭が悪いから

深夜に起きた強制わいせつ事件。非難されたのは被害者の女子大生だった。
2016年に東大生が起こした強制わいせつ事件をもとにした作品。女子大生に行われたことが胸糞すぎて、本当にそんなことをされたのかと思わずGoogle検索してしまった。
加害者の生い立ちも描かれているが、両親の選民思想をまるっと受け継いでいる印象。
最後まで被害者の気持ちを欠片も理解できないままなのが悲しいし、事件に対して「東大生だからついていったんだろう」と被害者叩きが起きたのも恐ろしい。
勉強はできても社会的な面で問題がある人は多い気がする。

 

傷モノの花嫁

幼いころに猩々に攫われ、「傷モノ」とされてしまった菜々緒。そんな事件があり、許嫁との縁談も破談に。酷い扱いを受ける彼女はある日、紅椿夜行に見初められ妻として迎え入れられる。
コミック版の広告がいろんなところで流れてくるので読んでみた。流行りのシンデレラストーリー系。
ストーリーの途中途中でキャラクターたちの裏側が見れるような構成がされていて、彼らがそのとき何を考えて動いているのか分かる構成になっていたのが面白かった。
菜々緒がずっと簪を持ち続けていた理由が意外。王道だからこその安心感です。続編が楽しみ。

 

彼女のしあわせ

長女・征子は一人で生きていくことを決めたバリキャリOL。次女の月子はブログが趣味だが幼い娘の世話がおざなりになりがち。三女の凪子は子宮の異常の秘密を抱えたまま結婚。そんな三姉妹の母親である佐喜子。彼女たちがそれぞれのしあわせを見つけ出す物語。
登場する女性たちはきっと誰かに当てはまるのではないかと思う作品。自分にとっての幸せ。大事にしたいもの。一人一人違うし、誰かと比較することでもない。
SNSで様々な人の生活が気楽に見える分、そういったことを忘れがちだなと思った。劇的なことは起きないけど、それがリアル。

 

太陽のパスタ、豆のスープ

結婚式の直前になって婚約破棄されてしまった主人公の明日羽。失意のどん底にいる彼女の叔母・ロッカから、ドリフターズ・リストの作成を提案される。
突然の婚約破棄で戸惑いの落ち込みの中にいる明日羽が、ドリフターズ・リストを通じて立ち直っていく物語。ドリフターズ・リストはいわゆるやるたいことリストのこと。
リストにあることを達成して充実感を得られたり、はたまたリストに書いたことは本当にやりたかったことなのかと立ち止まったり。
自分の人生を見つめなおすタイミングというのは大事なのかもしれない。
婚約破棄の理由が曖昧過ぎて「おいおい」と思ってしまったり、その後どうなったのかみたいなところが一切描かれなかったのは個人的にちょっともやもや。
式場のキャンセル料や招待した人へのお詫びとかってどうしたんだろうか…。

 

息ができない夜に、君だけがいた。

高校で演劇部の所属する花澄。ある日、新入生歓迎会のミニ演劇での演技をクラスメイトにからかわれたことで、学校にいる間は声が出なくなってしまう。そんなときに声をかけてくれたサッカー部の蛍と、三か月間だけという約束で放課後に行動を共にしはじめる。
私の学生時代にも、演劇部にいる子をからかっているクラスメイトがいたなあと思いながら読んでいた。自分が好きなものをからかわれるのは悲しいけど、周りがなんと言おうと自分の気持ちが大事。
不器用だけど、みんな真っ直ぐ。ザ・青春。
最後の書き下ろしにニマニマ。

 

プルースト効果の実験と結果

表題作のほか、3編の作品が収録された短編集。著者が2016年にオール讀物新人賞を受賞した作品も収録されている。
青春小説の青い感じや、学生時代の眩しさあふれる感じもあるが、どのお話もちょっとほろ苦さが入っているので糖分高めの青春小説はちょっと…という方も読みやすいのでは。
短編集だからというのもあるかもしれないが、文章が読みやすいので一気読み。
プルースト効果は特定の香りから過去の記憶が呼び覚まされる現象のこと。確かに香りは記憶と結びついていることは多いかも。
他の作品も読んでみたい。

 

キッズファイヤー・ドットコム

自宅の前に放置されていた、自分の子かも分からない子供を引き取ったホストの神威。それでも目の前の子供のため、神威はクラウドファンディングで資金を集め子育てをすることを思い付く。
ホストがあたふたしながら子育てに奮闘する話かと思っていたが、だいぶ違う方向に話が進んでびっくり。思ったより社会派要素がっつり。
神威が言いそうにない子育て論を語るシーンもあり、著者が言いたいことを代弁させているのかなと感じた。
文庫本の表紙が可愛くて気になった作品だったが、あの表紙とはかけ離れた内容だという印象。
出生届を出しているかもわからない、相手が誰かもわからない、そもそも自分の子供かもわからないなら警察に行くのがまず先でしょうと思う。

 

ツミデミック

コロナ禍を舞台にした犯罪がテーマの短編集。ぞわぞわするものもあれば、ほっこりするものまでさまざまなタイプのお話が6編収録されている。
持続化給付金の詐欺のお話もあり、そういえば一時期あんなにニュースで見ていた気がするけど最近は見ないってことは、詐欺をしていた人はみんな捕まったのかななんて思った。
コロナ禍自体もなんだか随分昔の話のように感じている。ああいうときこそ人間性というものが見えてくるのだろうと思う。
個人的には「ロマンス☆」と「祝福の歌」が好き。世にも奇妙な物語とかで見てみたい。

 

邪心 警視庁犯罪被害者支援課2

元カレとの事後の写真を流出されたと相談してきた被害者。リベンジポルノとして立件するにはギリギリのラインである写真の対応に戸惑うが、ある日相談を持ち込んだ被害者が暴漢に襲われたことを機に事件が加速する。
リベンジポルノはここ最近のイメージだったが、本作が2015年に出ているので意外と昔からあったんだなと思った。
綾子みたいな人は実際にいそうだなと思いながら読み進めた今作。
自分の人生を上手く運ぶために人を利用する時点で同情はできなかったが、自業自得と言ってしまうと司法は成り立たないのも分かる。もやもや。

 

バナナケーキの幸福 アカナナ洋菓子店のほろ苦レシピ

医者である夫の不倫によって離婚した専業主婦の茜。娘・七の言葉をきっかけに、商店街で得意料理であるパウンドケーキの卸売を始める。
とんとん拍子で話が進み、あっという間にお店の開店までこぎ着けるので、こんな上手くいくかな?と思いつつ、やりがいを見つけていきいき働く茜を見ていると良かったねという気持ち。
ダークフルーツケーキというのがイメージが湧かなかったので思わず検索。美味しそう。
後半に元夫の自死から七へのプロポーズ、結婚とあっという間に進んだのはびっくりした。ちょっと急ぎすぎてるような気がするのがもったいない。

 

若旦那さんの「をかし」な甘味手帖 北鎌倉ことりや茶話

家事代行サービスで働く都。ある日、同僚の急病で代わりに派遣されたのは北鎌倉にある和菓子職人をしている一成の自宅だった。
両親の離婚によって和菓子が苦手になった都が、派遣先の和菓子職人・一成のお菓子のおかげで克服していく物語。
1年のお話を春夏秋冬に分けて4章で構成されており、それぞれ和菓子が1品ずつ登場。桜餅やあんみつ、抹茶パフェ、ぜんざいとどれも美味しそう。
著者の他作品ともリンクしているようだがそちらは未読。読んでいなくても特に影響は無く単体でも楽しめる。
続編がありそうな感じなので待つ予定。

 

-196℃のゆりかご

義母の奈緒が婦人科系の病気で倒れたことにより、実は義母ではなく血の繋がった実母であることを知ったつむぎ。なぜ義母だと嘘をついたのか。つむぎは自分の出生の謎を追う。
体外受精の話。不妊治療をしているので自分自身あまり関係ない話には思えず、胚培養のシーンは読んでいてとても興味深かった。
一昔前は確かに試験管ベビーと言われていたこともあったなと思いかえすと、主人公が最初の方で体外受精に対して嫌悪感を示したのも分からなくはないかなとも思える。
ストーリー自体は案外あっさり解決してしまうので、もうちょっと厚みが欲しかった。

 

何食わぬきみたちへ

いじめを見て見ぬふりをしたことを悔いる伏見、障がい者の兄と暮らす敦子。
何食わぬ顔をして安全圏でいられる彼らに対して、ままならない思いが突きつけられる。
少し前は障がい者に対して理解を深めましょうという風潮だったが、最近はきょうだい児にもフォーカスが当てられることも増え、様々な立場の人がいるのだと知るとともに、作品を読むと自分自身もそういう人たちからすると「何食わぬ顔をしている人」だったのだろうかと思う。
目の前の問題が他人事としか思えないと、考えることすらしない人は多いのでは。いろいろな思いが巡る作品。
著者が二十歳と知って驚いた。

 

心霊探偵八雲1 完全版 赤い瞳は知っている

死者の魂が見えるという斉藤八雲。ある日、主人公・晴香の友人の美樹が肝試しで大学の裏にある廃屋を訪ねてから様子がおかしくなり、晴香は八雲に調査を依頼する。
中学生のときに読んでいたシリーズが完結していたため、再読しようと思っていたら全面改稿して完全版として出します!とあり、せっかくなので完全版にて再読。
八雲と晴香のまだ馴染めてない感じが懐かしい。現代版にアップデートとあったが、大筋は変わらないので違和感無し。
晴香が八雲の目を綺麗だと言うシーンがやっぱり一番好き。2巻以降も改稿予定とあったので楽しみ。

 

たやすみなさい

短歌というと詠んでいる風景や場面が想像しづらいものが多いというイメージだったが、本作の短歌はどれも分かりやすい言葉遣いをしていたり日常的な場面が多かったので、すぐにどういう場面か想像がついて楽しめた。
日常のふとしたところを切り取って、素敵な短歌にできるというのはすごいなと思う。
タイトルは「たやすく眠れますように」という意味だそう。表紙もキラキラしていて素敵。
「戦前を生きるとしてもシネコンにポップコーンのにおいは満ちて」「気づいたら無印にいてうっかりと聴き入っているケルト音楽」が好き。

 

数え間違いでなければ26冊読んでいるのだが、自分でもこんなに本を読んだのは久々でびっくりした
普段は10冊前後なのだが、よっぽど暇だったのかもしれない